前進するための何か

関心のあること、面白いと思ったこと、気づいたことなどを自由に書きます。プロフィールの画像は水彩画の小樽の風景画です。

サンピエトロ大聖堂の快足修道僧

1年間の契約社員として観光客に営業、そのうちの10ヶ月をローマで暮らしたときの体験です。
私小説風の文体になっています。

僕ら日本人社員の住んでいた会社の寮がバチカン市国の近くにあったため 休みの日には歩いてバチカンの見学に行けた。

ある日曜日、 ビデオ撮影班のY君と市内を見て、その初めにサンピエトロ大聖堂の屋上に行こうと決めた。

そこから眺めるローマ市内はどんなだろうと心が踊る。

勇猛果敢で知られたスイス衛兵が色鮮やかな衣装で槍を持って立っている。
見上げると137 mの高さに天蓋が。
上りはエレベーターがあり途中で降りて、 壁の側面に沿った螺旋階段を上って屋上へと向かう。
この階段は狭く、ドームの斜めになった壁沿ってグルグルと続いているため、体を傾けて登らねばならず、割ときつい。

狭くて暑苦しい階段から出てやっと屋上からローマの市内を見るとオレンジ色の瓦の屋根や広々と空が見えてそれは見事な眺めだ。

帰りは下りの螺旋階段になっていて、来る時よりも幅広く段差が少ないため足を運ぶ速度は次第に速くなってくる。重力によって次第に速度は上がってきてだんだんと
駆け足になってくる。
そのうちに観光客同士の競争の様相を呈してきた。
僕とY君は次々と他の人々を追い抜きながら降っていた。 Y君はハードルの選手だったらしく、スピードには自信があった。

石段の角が丸まっていてとても滑りやすい。ふと、上の方から猛烈な速度でおいてくる足音が聞こえる。 振り向くと茶色い服を着た修道僧がサンダル履きで急降下してくるのが見えた。
こちらもスピードをあげようと思ったがあっという間に笑いながら抜き去って行った。何回か我々が回っている間に姿は見えなくなった。
もっと加速しようと思っていたが、Y君の姿が見えなくなった。
その後も走り続けて地上階に着いた時には、その修道僧は他の地元の人々と笑いながら話しているところだった。
後から降りてきてY君はとても残念そうに言った。
「アカン、靴が滑ってしもうた。」
彼の靴底は仕事で長い間歩き回りかなり磨り減っていたのだ。

その後Y君とカタコンベに行ってみた。
壁には立ったままのミイラが並んでいる。
それよりも驚いたのは、部屋の空間全体が壁一面人骨で追われていて、それがそれぞれの人骨ごとに 並べられてデザインを作っているという不気味さだった。
二人とも圧倒されてそこを出て来ようとすると、
2階に上がる階段の出口付近で、修道服を着た妖怪のようなおじいさんが出てきた。
それと彼はいきなりY君の腕を引っ張りあちらの方へと連れて行く。
叫び声をあげながら連れて行かれるY君と一緒について行ってみると、そのじいさんは壁に貼られた一枚の紙を指差した。
それには日本語と英語でこう書いてあった。
「私たちも以前あなたと同じようでした。あなた方もいずれ私たちと同じようになります。」

怖いホラー体験のローマ観光だった。

 

 

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